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赤い雪(最終話)
「違う!ボクはやってない!」

「なら!それならちゃんと説明しろ!俺たちを信じさせてくれよ!フィオ!!」

「違う・・・違う。これは・・・ボクじゃない・・・」


ボクはもう一度自分の服を見た。
胸からお腹にかけて広がる赤い染み、そしてサビたようなこのニオイ。


・・・まちがいない・・・血だ。


もちろん覚えはなかった。
寝る前にはこんな染みはついていなかったし、ボク自身ケガもしていない。


身に覚えが全く無い染みだった。



・・・でも。


・・・心当たりはあった。




お前がやったのか?




ボクは尋ねた。


・・・もう一人の、ボクに。


『・・・』


心の中で尋ねた。

何度も、何度も。


しかしもう一人のボクは何も答えない。

満腹になって昼寝でもしているかのように、静かだった・・・。


 :

ハント「フィオ、答えてくれ!お前がやったのか!?」


ハントさんは、武器を持って教会の中に押し寄せようとしている村人たちを必死に止めながらボクに聞いた。


フィオ「ボクは・・・”ボクは”やってない・・・」

「うそつけ!」

「その染みはなんだ!」

「お前がやったんだろ!」


口々に叫ぶ村人たちの声の中に、ボクは聞いた。

はっと息をのむ音を。


振り返ると、ボクの部屋からエレナが顔だけ出してこっちを見ていた。
不安そうな、今にも泣き出しそうな顔・・・。
そして彼女のクチは小さくボクを呼んだ。

「フィ・・・オ・・・」



フィオ「うあぁぁーーーーーっ!」


エレナに聞かれた。
エレナに見られた。
エレナに知られた。
エレナに
エレナが
エレナを
エレナに
エレナに
エレナを
エレナが・・・


エレナが遠くなる・・・。


フィオ「うあぁぁーーーーーっ!」


村人たちを突き飛ばし、裸足のままボクは外へと駆け出した。

雪の中を叫びながらひたすら走った。

ボクの世界が急速に閉じていくのを感じた。


とても狭い世界。


仲間もいない。

居場所も無い。



そして、エレナもいない・・・。

 :
 :

ボクは雪の中にいた。

どうやら足を滑らせて坂から転がり落ち、しばらく気を失っていたらしい。
足に痛みが走る。
軽くくじいたみたいだ。


今までのことが全て夢ならいいのに・・・。


ボクはただの人間で、エレナやアキ姉、ハントさんたちと一緒に笑いあえる。
そんな普通の生活に戻ればいいのに。


しかし、ボクの服についた赤い染みはそれを許してくれなかった。


「行かなきゃ・・・。もうボクの居場所はここにないから。」


じゃあどこにあるの?
ボクにはわからなかった。

ただ1つ、確実にいえるのは・・・。

それは・・・、ボクの居場所がどこだとしても、そこにはもうエレナがいないということだった。

 :

「動くな」


いつの間にか目の前に、銃を構えた男が立っていた。


フィオ「・・・ハントさん」

ハント「・・・」


銃を向けられているというのに、ボクは安心していた。

むしろ以前から、こうなることを望んでいたかのような気さえする。

そう・・・ハントさんなら、ボクの居場所を作ってくれそうな気がしていたんだ。


ハント「フィオ・・・お前、人狼なんだな?」


ボクは、静かにうなずいた。


フィオ「ごめんなさい・・・」

ハント「・・・そうか」


ハントさんはボクに銃を向けたまま首を振った。


フィオ「ハントさん・・・」

ハント「・・・なんだ?」

フィオ「ボクのこと・・・、殺してよ」

ハント「・・・!?」

フィオ「もう、ここにはボクの居場所がなさそうだから・・・」

ハント「・・・」


ハントさんは無言のまま空を見上げ・・・そして静かにうなづいた。


銃の照準がボクの胸に向けられる。。
ハントさんの目からこぼれる涙が嬉しかった。

ボクは目を閉じ、お腹の前で手を組んだ。
新しい居場所を受け入れるために。


・・・エレナ。
最後に、声が聞きたかった・・・。






「やめてぇぇぇーーーーっ!」


!?

眼を開くと遠くに人影が見えた。


エレナ「フィオを殺さないでーーー!」

フィオ「エレナ!?」

ハント「こっちに来るな!」

エレナ「撃たないで!違う!フィオは人狼なんかじゃない!」


走るエレナをハントさんが片手を広げて背中で止める。
銃をボクに向けたまま。


エレナ「だめ!フィオを撃たないで!離して!やめてぇ!」


エレナは泣きながら叫んでいた。

ボクは立ち上がりエレナに駆け寄ろうとした瞬間・・・熱いものが胸を貫いていた。


弾みで撃たれたのか、それともボクがエレナを襲おうとしたように見えたのか。

ボクにはわからない。

そして、わかったところで結果は変わらない。



・・・ボクは静かに雪の上へと倒れこんだ。


 :


エレナ「フィオ!フィオ!しっかりして!」


エレナはボクの頭を膝の上において泣きながら叫んでいた。

ボクは彼女を見つめた。
エレナ・・・


エレナ「フィオ、ごめんね・・・ごめんね」


謝らなくていいよ・・・、ボクが、悪いんだから。


エレナ「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」


・・・遠くにハントさんが倒れているのが見えた。



エレナ「ごめんなさい・・・」




ハントさんの首は赤く染まっていた。

まるで獣に噛み千切られたかのように。






エレナ「ごめんなさい・・・」















エレナ「アキ姉を食べたの・・・あたしなの・・・」


 :
 :





いつからだったのかな・・・


自分でもわからない。



・・・わからないよ。




あたしは自分が”普通”だって思ってた。
みんなと同じだと思ってた。

朝起きたら、顔を洗って、みんなにおはようって挨拶して、笑って、走って、みんなと一緒に暮らして、そして恋をして・・・。
たまに泣くことはあっても、明日には笑える。

そういう”普通”の日が、ずっとずっと続くものだと思ってた。

みんなだって・・・そうでしょ?



でもね…。

あたしは違ってたんだ…。


だって、だってね。



あたし・・・。



彼のことを・・・。



食べたくて仕方が無いのだから・・・


 :


エレナ「ごめんね・・・ずっと抑えて来たんだけど・・・長老が殺されたときの血のニオイで、もう一人のあたしが起きちゃったの・・・」


雲の間から満月が顔を出し、ボクらを照らした。
そして初めて気づく。
彼女の服が、ボクよりも赤く染まっていることを・・・。


エレナ「ずっと怖くて、怖くて仕方なかった・・・」


そうか。

ボクの服の赤い染みは、エレナがボクの部屋に来たときに付いたものだったんだ・・・。


エレナ「こんなことを言ったらきっと嫌われると思う。でも・・・言うね・・・」


・・・。


エレナ「あたし・・・ずっとフィオのことを食べたくて仕方なかったの。フィオのことが好きで、ずっと一緒にいたくて。・・・でも、食べたら、フィオがいなくなっちゃう。そんなの耐えられない。だから・・・代わりにアキ姉を・・・」


彼女の涙をボクはそっと拭ってあげた。


フィオ「同じだよ・・・」

エレナ「え?」


エレナの指の先をほんのちょっとだけ、優しく噛む。
チクッとする痛みにエレナは顔を歪めたが、その顔はすぐに驚きの表情へと変わった。


フィオ「ボクもね・・・同じなんだよ」


血がにじむエレナの指に涙が落ちる。
ボクもいつのまにか泣いていた。



ボクたちはずっと一人で悩んでいた。


話したら嫌われると思っていた。


永遠に一人ぼっちだと思っていた。




でも今・・・。

ボクたちはようやく、居場所を見つけることができたんだ。


 :

安心したからかな


眠い、凄く眠い


そうか、まだ夜だもんね


エレナごめん、ちょっとだけ寝てもいいかな


朝起きたら、顔を洗っておはようって言うよ


そしてまた二人で笑おう


だから、ほんのちょっとだけ・・・





エレナが泣いていた。
ボクは涙を拭こうと手を伸ばした。


エレナがボクに話しかけた。
でも声はもう聞こえなかった。


エレナの姿が霞んで消えそうだった。
だからボクはエレナに寄り添った。



体が重くて動けなかった。

だからボクは、エレナの温もりの中に沈んでいった・・・。





 :

翌朝、村人たちによってハントの死体が発見された。

首が噛み切られていることから、人狼の仕業であることは容易に想像できた。

少し離れたところに、血で真っ赤に染まった雪があった。
昨夜、銃声が聞こえたため、ハントが人狼と戦った後であると判断する。
また、その雪の赤さから大量に出血したことが窺え、人狼も生きていないだろうと村人たちは悟った。



しかし、そこに残されていたのはハントの死体だけだった。



代わりにあったのは1つの足跡。
そして足跡の隣りには、何かを引きずったような跡。

それらは500mほど離れた川まで続き、そこで消えていた。


やんでいた雪が再び降り始め、村を覆い始める。

教会も

足跡も。



赤い雪も。





全て、雪が白く覆いつくしてくれるだろう。





いつか、きっと。






 :
 :
 :















~エピローグ~


「それで、どうなったの?」
「ねぇ、あの二人は?」
「どこに行っちゃったの?」


「・・・さぁてね、婆が知ってるのはここまでじゃ。さぁ、今日のお話は終わりじゃよ。みんな家にお帰り、気をつけてな」


「はーい」
「またお話聞かせて」
「明日もこれがいい」
「えー、あたしは違うのがいいよぉ」


はしゃぎながら帰っていく子供達を見送った後、老婆も帰りの支度を始める。


「ねぇ、おばあちゃん」


子供はみんな帰ったと思ったところに話しかけられ、老婆は驚いて声の方を見た。
あまり見たことの無い、笑顔のかわいい女の子だった。


「おやおや、まだいたのかい?見慣れない子だね」

「フィオとエレナ・・・どうなったのかな?」

「どうだろうねぇ。婆にはわからんねぇ。お嬢ちゃんはどう思ったかぃ?」


「あたし、生きてると思うよ!」


彼女は微笑んだ。
口元から覗く八重歯が印象的だった。


「ほう、どうしてそう思うんだい?」

「・・・そんな気がするから!」


そう言うと、女の子は傘もささずに外へと駆け出した。
風に舞う白い雪を頬で感じながら。


(完)
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【 2008/09/27 13:15 】

人狼 | コメント(5) | トラックバック(0) |
<<赤い雪 ~あとがきにかえて~ | ホーム | 赤い雪(第四話)>>
コメント
--- お疲れさまです ---

ドキドキしながら読ませてもらいましたo(^o^)o最初題名未定のまま始まったこの物語も等々完結してしまい少し寂しいですが楽しかったです\(^-^)/パミミさんドキドキをありがとう、そしてお疲れさまでしたm(__)m
PS.次回作も期待してます(>_<)
こだい * URL [編集] 【 2008/09/28 02:33 】
--- ---

◆こだいさん
感想、ありがとうございます!
楽しんでいただけた方がいたということだけで、ひとまず胸をなでおろし中です><
てかほんと拙い文章で読みづらかったと思います。
最後までお付き合いありがとうでした。

次回作はとりあえず予定すらないでs^^;
ぱみみ * URL [編集] 【 2008/09/29 11:56 】
--- ---

おつかれさまでした。
結末が気になって、一気に読みました!
最後まで、ハラハラドキドキでした。(/ω\)
雪と赤の風景が、ほんとに切ない物語でした。

次回作、楽しみに待ってます。
お忙しいと思いますので、また気が向いたら読ませてくださいね。ヽ(´ー`)ノ
izumi * URL [編集] 【 2008/09/29 19:02 】
--- ---

ドキドキしながら読みました~!良かったです^^

完結しちゃった…
ずっと読み続けていたかったような、読み終えて満足なような、不思議な感じです(ノ∀`)

最後まで楽しませてくれてありがとでした~、そしてお疲れ様!
おちゃ * URL [編集] 【 2008/09/29 20:43 】
--- ---

◆izumiさん
感想ありがとうございます~><
あそこまで赤さが出たのはイズミさんの感想のお陰だったりしますが^^
お陰さまでタイトルも決まりましたし、完結もできました。
お世話になりましたです♪
次回作は…何か面白そうなのを思いついたらですかね~w。

◆おちゃさん
最後まで応援、ありがとうございました!
なんとか期待に応えることが出来たようで、安心しましたw。
終わるのが惜しいって言ってもらえるのは、ほんと嬉しいです。
エレナちゃんのは...バレてましたか?w
くすくす♪
ぱみみ * URL [編集] 【 2008/09/30 10:06 】
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