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赤い雪(第三話)
村の姿を遠くに見つけて、ボクは思わずため息をついた。
ようやくこの意味のない山狩りから開放される。

絶対に見つからないものを探すことは非常に難しく、退屈で、疲れるものだった。

表情がすぐれないボクを見て、一緒に山狩りに行ったハントさんが声をかけてくれる。
だがボクはそれに生返事を返すくらいしかできなかった。


しばらく歩くと村の入り口が見えてきた。
そして門のところに誰かが立っていることに気づいた。


エレナ「・・・やっぱりフィオだ、おかえりなさ~い!」

フィオ「・・・エレナ!?」

エレナ「うん、村に向かってくる人影が窓から見えたから、きっとフィオたちだと思って迎えに来ちゃった。寒いのにお疲れ様!」

フィオ「・・・ありがとう。ただいま」


エレナはボクとハントさんにタオルを渡してくれた。
雪で濡れないように、ぎゅっと抱きしめていてくれたらしく、タオルにはエレナの温もりが残っていた。
もう一度ありがとうと言うボクに彼女は優しく微笑みかけてくれた。

そんな彼女のことをボクは・・・






『食べたくて仕方が無い』




・・・!?

『だろ?ククク・・・』

・・・誰だ!?

『ん?わからないのか?・・・オレはお前だよ』

ボク?

『ああそうだ。ほんとは長老じゃなくてあいつのこと食べたかったんだろ?そうやって自分をごまかしてるお前の姿が不憫だから、オレが出てきてやったんだぜぇ?』

違う!
ボクはもう嫌だ。ただ、エレナと一緒にいたいんだ!

『・・・ウソツキ』

えっ?

『知ってるぞ?お前の本心、欲望、そして本能を!・・・そう、オレがそうだ。オレはお前なんだよ!』

違う、違う、違う、ちがう!

『早く思い出せよ。オレたちは腹が空いてるんだ。そして目の前にエサがある。何も悩む必要がないだろ?かぶりついちまえよ、頭から、手から、足から!それとも首からか?クククク、早く思い出せよ!』

違う、ボクはお前のような獣じゃない!
ボクは人間だ!

『ククク・・・そのとおり。お前は人間の心。だからウソをつく。そしてオレは獣。そうだ、知ってるか?獣はウソなんか付かないんだぜ?・・・クハハハ!』

だまれだまれだまれ!



・・・頼むから。



・・・お願いだから。




ボクに・・・




ウソを付かせて・・・。



エレナ「・・・ょうぶ?フィオ!」

ハント「おい、どうした!」

フィオ「・・・あ、だいじょうぶ・・・ごめん」

エレナ「ビックリしたわよ、いきなり頭を抱えてうずくまっちゃうんだもん」

ハント「今日はいろいろあったからな。うまいもんでも食って早く休むといい」


うまい・・・もの・・・。

エレ・・・

!?


ダメだ、ダメだ!
ボクは頭を振り、考えてしまったことを体から離そうとする。


フィオ「ありがとう、でもボク、食欲が・・・」

『ありあまってるよなぁ、ククク』

フィオ「黙れよ!」

エレナ「!?」

ハント「どうした、フィオ!」

フィオ「・・・ごめん、やっぱり疲れてるみたい。今日は早く寝るようにするよ。ごめん」

ハント「そうだな・・・。そう言えばエレナ。アキはどうしてる?」

エレナ「今、ミントさんが一緒にいてくれてる。泊まりに来るように誘ってくれてるんだけど、アキ姉、うんって言わないの。長老の家にいたいって・・・」

ハント「そうか、じゃあ俺は長老の家に寄っていく。ミントも迎えに行かないとだしな」

エレナ「あたしも行く。フィオは先に帰ってていいよ?」

フィオ「ううん、ボクも行くよ」

エレナ「ありがとう、じゃあ一緒に行こっ」


ミントさんはハントさんの奥さんだ。
まだ20代でハントさんとはかなり年齢が離れている。

数年前、ミントさんが小川に水を汲みに行った時、野犬に襲われたのをハントさんが助けたのが彼らの馴れ初めらしい。

ハント「野犬が襲われてて助けようと思ったら間違っちまった」

ハントさんの定番のジョークだが、もちろんそれを本気にする人なんかいない。
ミントさんはどう見てもそんなことができない、細くて綺麗な人だったからだ。



ボクらが長老の家に着くと、玄関でミントさんとアキ姉が話しているところだった。


ミント「せめて今日だけでも、うちに泊まってくれればいいのに」

アキ「ありがとうございます。でも、私はこの家に残ります・・・」


きっと何度もやり取りされた内容なのだろう。
ミントさんはこれ以上言っても仕方ないと思ったらしく、わかったと言って引き上げようとしてボクらを見つけた。
アキ姉もこちらに気づく。


エレナ「アキ姉…」

エレナの不安そうな顔を見て、アキ姉は少しうなづいた。

アキ「だいじょうぶ。・・・でも、しばらく一人にさせて・・・」

エレナ「・・・」


アキ姉の頬を伝う涙を見て、エレナも涙をこぼす。

それをボクは見ていることしかできなかった。

 :

ボクらは長老の家を後にし、4人で歩いていた。
雪が徐々に強くなっていた。
明日の朝にはきっと一面が銀世界に覆われるだろう。

赤い雪も・・・一緒に埋もれて白く変われればいいのに・・・。


ハント「なあ?」


ハントさんが口を開いた。



ハント「お前ら・・・人狼って聞いたことあるか?

フィオ「!?」

ミント「なぁに、それ?」

エレナ「あたしも聞いたことないです」

ハント「そうか・・・。いや、俺も昔、婆ちゃんが話してくれたのを聞いただけなんだが、今回の事件で思い出したんだ」

フィオ「・・・」

ハント「昔な、このあたりに人の姿をした狼が住んでいたらしい。そいつらは里へとやってきて、人間を食べていたらしいんだよ」

ミント「人の姿をした狼ってどんなのかしら?想像できないわ」

ハント「うーん、俺も婆ちゃんの話を聞いただけで、絵本を見たわけじゃないからなぁ」

エレナ「で・・・続きはどうなるんです?」

ハント「ああ、そう詳しく覚えてるわけじゃないが、そいつが夜な夜な村人を食べに来るから、夜は鍵をかけて寝なきゃダメだ。灯りも早く消さないと、人が住んでることがばれちまうから早く寝なって感じの話さ」

ミント「それで終わりなの?子供を怖がらせるための作り話っぽい」

ハント「いやいや、驚くなよ・・・。その話の結末はな、なんとその人狼が人間の女の子と結婚して一緒に旅に出るってんだ、ガハハ」

フィオ「ほんとっ!?」

ハント「うわっ、こらフィオ、いきなり大声出したらビックリするだろ」

フィオ「ごめん・・・でもその終わり、本当なの!?」

ハント「ああ、婆ちゃんの話はそうなってたぜ?人狼のところに女の子が一人で行き、そのまま二人はどこかに行きましたってな…」

ミント「・・・あんた」

ハント「ん?」

ミント「それって・・・結婚じゃなくて・・・」

ハント「ああ、子供の頃は良かったななんて思って聞いてたが、今考えたらただの生け贄だよな」

フィオ「・・・」

ミント「子供用の話としてオブラートに包んだんだね、きっと」

ハント「おいおい、何を真剣に言ってるんだよ。ただの昔話を真に受けるんじゃねー。要は俺が言いたいのは、ちゃんと戸締りして早く寝ろってことだ、わかったなフィオ」

フィオ「・・・」

ハント「おい、フィオ!」

フィオ「ん?なに、ハントさん・・・」

ハント「話がある、こっちに来い」


ボクは言われるとおり近づくと、ハントさんは少し小声で話し始めた。


ハント「・・・いいか?俺とお前は男だよな」

フィオ「・・・うん」

ハント「男は女を守るもんだ。そう遺伝子が出来ている」

フィオ「遺伝子・・・」

ハント「俺はミントを死んでも守る。だからお前は・・・エレナを守れ。いいな、わかったな?」

ミント「ちょ・・・あんた何言ってるんだい、恥ずかしい話はやめておくれよ」

ハント「うるせぇ。盗み聞きするんじゃねえ!」

ミント「だったらもっと静かな声で話して。そんな声じゃ村中に聞こえるよ。もぅ・・・」

ハント「・・・フィオ、俺が言いたいのはそれだけだ。いいな?わかったな?」


ボクはエレナの視線を背中に感じていた。


フィオ「・・・うん。エレナはボクが守るよ」

ハント「よしっ、じゃあ俺たちはもう行くからな。気をつけろよ!」

エレナ「うん、ハントさん、ミントさん、送ってくれてありがとう!」


ボクも黙って手を振った。
そして二人、ボクとエレナが残された。


エレナ「えへへ、なんか照れくさいね」

フィオ「・・・」


ボクはエレナの顔を見れなかった・・・。


エレナ「ねぇ、フィオ?」

フィオ「うわっ、な、なに?」


ボクの顔を覗き込んできたエレナに、驚いて答えた。


エレナ「・・・守って、くれる?」

フィオ「・・・うん」

エレナ「よしっ、頼りにしてるぞっ。さあ帰ろう。今日はエレナちゃんの美味しいジャガイモスープを作ってあげちゃうから!」


ボクらの住む教会に向かって明るく走っていく彼女をボクは追いかけようとした。

そのときだった。



『ククク、何から守るって?』

・・・!?

『守るも何も、人狼はお前だろ?お前は守るんじゃなくて、食べる方だ。ジャガイモなんかよりももっと美味しいものを食べたくて仕方が無いんだろぉ??』

違う!

『何が違う?彼女を守ることなんて最初からできねーんだよ!』


違う違う違う!


ボクは守る!




お前から・・・。




・・・ボクの中の獣から、彼女を守る。






・・・たとえどんな結末になったとしても。

第四話につづく)

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【 2008/09/11 11:04 】

人狼 | コメント(2) | トラックバック(0) |
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コメント
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にゃああああっ!
いつの間にか更新されてるわっ!

ドキドキしながら読みました(ノ∀`)
パミミさんの文才に脱帽です!
おちゃ * URL [編集] 【 2008/09/11 15:19 】
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◆おちゃさん
いらっしゃいませ^^
感想ありがとうでっす!

更新ですが、恐らく来週に第四回、再来週に最終回となる予定です~。
よかったらまたぜひ遊びに来てください^^

最後まで楽しんでもらえるよう頑張りますですよ♪
ぱみみ * URL [編集] 【 2008/09/12 09:03 】
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